活きたHACCPを作ります!

HACCP作成時の考え方   〜活きたHACCPとは〜

HACCPは作り手次第!

HACCP作成は厚生労働省が定めた義務です。義務を満たせばよいとだけ考えるならとても簡単に作成できます。

 

例えば

 

  ラーメンA

 

ラーメンA

 この美味しそうなラーメン。透明なスープにやや縮れた麺。具はチャーシュー、メンマ、煮卵、海苔、水菜の他に煮干し粉的なものも見えます。

 

 

  ラーメンB


ラーメンB

濃厚そうな背脂が浮いたスープ。麺の姿は見えません。具は大きな角切りのチャーシュー、煮卵、コーン、もやし、海苔、ナルトです。

 

 

 

あっさりラーメンのAと、こってりラーメンのBどちらも美味しそうです。

 

 

このメニューでHACCPを作る場合、最低限の記入をすると 「加熱して提供するもの ラーメン」だけです。味やタイプの違いは関係なくメニューとしてはラーメンです。では「ラーメン」の重要管理点はといえば「加熱」です。加熱の温度を徹底してそれでOK!となります。

 

どんなトッピングかとかどんなタイプのスープかは保健所にはわかりません。こちらの作成する書類に記入されたことしか知り得ません。ではこのメニュー「ラーメン」、チェックする工程「加熱温度」のみ記入したHACCPを作成して食中毒の可能性はなくなるでしょうか?

 

 

無理ですよね!

 

本当に食中毒の可能性を減少させるためには、正しく作成した衛生管理の精度が高いHACCPが必要となります。

 

 

例えば、AもBもチャーシューがのっていますね。Aはあらかじめ仕込んでおいた切ったチャーシューを温かいスープに沈めて食べやすい温度にするタイプ。Bはスープにすら沈んでいません。どちらのタイプにしてもチャーシューに菌がついていたらアウトです。煮卵もスープで温めるタイプですね。よってチャーシューや煮卵をHACCPに入れて重要管理点での管理する必要があります。このチャーシューの場合は加熱してから冷ましてそのまま提供するタイプにあたりますので、加熱温度の徹底と急いで冷却して保冷温度をチェックする工程を入れます。煮卵は加熱すると言っても中心温度が菌が死滅する温度に達しないので、冷たいまま提供するものと加熱してから冷まして提供するものの両方から考えて冷却温度と保冷温度の工程での管理が考えられます。煮卵を作る時冷たい液に漬けるタイプと、温かい液に付けるタイプがありますよね。お店によって様々だと思います。自家製でなければ単に冷たいまま提供するものになります。どちらのタイプであるにしても、食中毒予防のためには管理する必要がある事がおわかりいただけるのではないでしょうか。海苔も、2017年に東京の学校でノロウイルスが原因の1000人以上の感染者が出る事件がありました。この事故のケースにおいては厨房施設での対策は難しかったのではないかとは思いますが油断できないのは確かです。(ちなみに、この事故は学校給食でおこったものだったので原因がすぐに海苔の加工業者として報道され給食施設に風評被害が及ぶことはなかったのですが、もし一般の飲食店であったらノーチェックの海苔から食中毒事故を出すことになり、また事故を起こした店の名前が報道されることになりお店は大きな危機に陥ることになっていたと思うとぞっとします。)その他にも水菜、コーン、もやし、ナルト、ねぎなどどの食材も食中毒の可能性を持ちますので重要管理点の設定が必要と思います。あと、忘れがちなのが背油。初めからスープに入っているのではなく盛り付け段階で「チャッチャ」するタイプは背油の管理も必要です。スープで麺を煮るわけではないので厳密にはスープと麺も分けて考える必要があります。

 

 

このように、本当に食中毒の可能性を減少させるためには、食材と調理に関する正しい知識が必要です。正しい知識で使用食材を分類し、調理工程を考えてHACCPに組み入れる事で穴のない活きたHACCPが出来上がるのです
逆に、HACCPを作成する人次第で全く役立たずのHACCPにもなります。意味がないHACCPでも提出義務を満たすだけでよいなら「ラーメン」「加熱温度のチェック」とだけ書いておけば提出時の保健所的にはOKということです

 

また調理の知識が乏しい人が考えると、煮卵の管理点を何の疑問も抱かずに、卵を煮るのだから「加熱温度のチェック」と無条件で考えてしまい誤ったHACCPを作成することになります

 

*卵黄の凝固温度が65℃〜70℃、サルモネラなどの菌が死滅する温度が75℃で1分といわれているので、中心温度が75℃に達してから1分間加熱するとなると半熟卵作成工程での「加熱の徹底」はHACCP的にギリギリですね。トロトロタイプの半熟卵に至ってははこの工程での管理は難しそうです。

 

このように、調理に関する知識と食中毒菌対策の知識をもってHACCPを作成することで、店舗経営上最大のリスクである食中毒を回避することにつながります。

 

お店で毎日チェックして記録する事が義務付けられるHACCPはいわば営業日報であり毎日の衛生管理業務の報告です。衛生管理精度が低いHACCPを作成すると、毎日その計画に準じて記録する従業員は、当然日報に記入する内容が自分に求められている業務の全てと判断することになり、日々そのレベルで業務を行うということになります。毎日のHACCP記録は確かに面倒ですがしっかりした管理実施の証明でもあります。いい加減な内容が発覚すると保健所の信用も失います。

 

 

 

 

以上から法律で正しいHACCPの作成と、日々の記録を義務付けられた理由がわかると思います。

 

       あとはそれぞれのお店の意識次第ということです。


HACCPは本当に役立ちます!

 

どうせ作るなら本当に役立つ良いものを作ってください!

 

活きたHACCPはお店を守ります!


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